どぅーどる・ぴっくす《#2》
「硫黄マッチ」


森 仔鹿

様々な名画を「棒人間」で描き直すことによって「ただ鑑賞する」だけでは伝わらない作品の真に森子鹿が迫る!#2はジョン・シンガー・サージェントさんの「硫黄マッチ」!二人の関係性に妄想が広がる一枚ですね〜。(コミンズ編)

今日の棒人間チャレンジはジョン・シンガー・サージェントさんの「硫黄マッチ」です。

私は絵は好きですが、あまり詳しくないのです。このチャレンジで描いている絵も、twitterで有名絵画botをフォローして、そのbotが一日に何枚か紹介してくれる絵の中から、見た目優先で「あっこれ素敵〜」と思ったものを描いているのです。なので、お手本も小さいし、その絵の社会的、歴史的位置付けもよくわからないまま模写をしていることになります。わからないまま描いていても、絵の中からじわじわっとお話が染み出してきます。描いているあいだずっとそのお話が聞こえてくるのが面白いのです。まるで知らない人の話を旅先で聞いているような気分になります。絵を描いている間、ずっと続くお話。今日のお話は・・

場所は薄暗い部屋の隅。吊るされたランプの光が濃い影を作っています。右上のサインを見ると、描かれたのは1882年。今から130年前。どこかの酒場でしょうか。床に転がっている瓶と、少しカケラも見えるかな。飲み疲れたのか、昔話でもするのか、画面の中の二人は喧騒を避けてここに移ってきたように見えます。

女の人は黄色いフリルのワンピースに朱色のスカーフ。艶のある黒い革のハイヒールにワンポイント。踊り子さんでしょうか。どこかから持ってきた椅子をガッタンガッタンしています。これお母さんにおこられるやつですね。

男の人は、黒ずくめ。肩には毛皮の大きな襟がついてます。どうやら寒いところにいたようです。まるで外から持ち込んだ暗さと一緒に座っているみたい。旅から戻った風情です。女の人はそれほど厚着じゃないですから、男の人は今店に来たばかりなのでしょう。二人はどうやら知り合いのようです。久しぶりなのかな。女の人はこれ、近況を聞いてますね。幼馴染かもしれません。付き合ったことも、ちょっとあるかも。

ガタン、ガタン「どうしてんの?」「まあどってことないよ」。男の人はマッチに火をつけてタバコを吸います。女の人の口元には笑み。

喧騒の中、揺らめくマッチの火を見ながらぼそぼそ話す二人の声が聞こえてるようです。いつもは交わらない二人の暮らしが、ここで一瞬交差しているところ。ドレスのまぶしい黄色と濃い影が目に残ります。「こんどいつくんの?」「いつかなあ」なんて、なんか切ない。がちゃがちゃと鳴る食器の音、酔っ払いの大きな笑い声、タバコで煙るランプの光。

小さなお手本を見ながら描いたので、絵がちょっと間違っています。私は右手にパイプを持って、左手にマッチを持っているんじゃないかと思ったのですが、後でウィキぺディアで大きな絵を見たら、右手にマッチを持って、左手には葉巻を持っていました。床に転がっているカケラのようなものも、実はなんだかわかりません。でもこの酒場に小一時間、一緒に座ることができました。

この絵の本物は個人蔵だそうです。回顧展などがない限りは見ることができなさそうですね。サージェントさん27歳の時の作品です。いつか本物を見てみたいなあ。ではまた来週、違う絵の中でお会いしましょう。ごきげんよう。さようなら。

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